今年はなぜか、中学3年生の式の展開でつまづいている塾生が多いような気がしたので、学校でどう教わっているのか調査してみたところ、ほぼ全員「まず乗法公式を覚える!」と言われていることが判明しました。

公式を覚えたのですが、いつどれを使ったらいいやら…

オーマイガー!!
さらには、

乗法公式忘れたので解けません!

オーマイガー!!
式の展開なんて自由にやればいいんじゃないの?ただの計算だよ!分配法則さえ分かっていれば大丈夫!あとは頭の中で同類項をちょいちょいっとまとめるだけだよ、と思っているので塾生たちの頭をほぐしていくことになりました。
基本は分配法則
※上の画像は「ゼロから始める数学Ⅰ・A」より引用させていただいております。
学校の教科書にも同じようにこの図が載っており、長方形の面積を使って式の展開をイメージできるようになっています。
これがイメージできていれば、乗法公式をまず覚えるということをしなくてもいいんじゃないかと思うのです。
(a+b)(c+d) の展開も図でイメージできれば困ることはないんじゃないかと。
教科書の図を解説したところ、塾生は「すごっ!」といっていたのでもしかしたら学校ではあっさり進んじゃったのかもしれません。(授業を聞いてないという可能性も無きにしも非ず)
(a+b)をひとまとまりとして分配法則を使うと
(a+b)(c+d)=(a+b)c+(a+b)d
となり、さらに分配法則を使って
=ac+bc+ad+bd
となることがわかります。
かっこの中の項が増えたとしても、これで対応できます。
このあたりを基本として考えて式を展開していってもらいたいなあと。
どうにも困ったときにはここに戻って考えられるようにしておいてほしいのです。
乗法公式とは?
教科書には4つほど書いてあったので、ひとつずつ見ていきましょう
(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
よく見る公式ですが、やっかいなところがありまして、「x」のところが全く同じじゃないとつかえないんですよ。
(x+2)(2x+1)とこうなるとお手上げの代物です。
(2x+1)(2x+3)となっていれば使えるのですが、4x2+4x+3という間違いをしてしまうことは多いです。
それだったら、分配法則をベースに考えて
(x+2)(2x+1)であれば
1.xかける2xで2x2
2.xかける(+1)でx、+2かける2xで4x、同類項なので合わせて5x
3.+2かける+1で+2
答えはx2+5x+2と暗算できそうです。
(2x+1)(2x+3)も同じように、2xかける+3で6x、+1かける2xで2x、同類項なのでまとめて8xというふうに考えれば、xの係数を間違えることもまずなくなるでしょう。
分配法則をベースに考えると、かっこの中の項が増えても、出てきそうな同類項ごとにピックアップして計算することができるようになるはずです。
(x+a)(x-a)=x2-a2
(x+a)(x-a)=x2-a2
お次はコレ。
分配法則を使って計算すれば、xが1次の項はaxと-axになり合わせると0になることはすぐわかるかと。
覚えておかないと因数分解の時に困るんじゃないの?と言われるかもしれないけど、xの係数が0になるように上手にかっこ中を設定してあげれば大丈夫。
覚えなくても特に問題なし。
(a+b)2=a2+2ab+b2
(a+b)2=a2+2ab+b2
次はコレ。
よくわからないけど「2をかける」ということだけ頭に残っていて、とりあえず何でもかんでも2倍しちゃうやつです。
その気持ちはわかる。
「2」って見えてるし、覚えてしまえば使い勝手はいいかもしれない。
ただ、(a+b)2=(a+b)(a+b)であることだけは頭の片隅にでも置いておいてほしいのです。
普通に分配法則を使えば、abという項がふたつ出てくるのがわかると思います。
同じ項がふたつ出てくるという「2」なんだということは、チラッとでも意識しておいてほしいかな。
これも因数分解の時困るのでは?と言われるかもしれない。
x2+6x+9=(x+3)(x+3)
とやってしまってもいいんじゃないの?と思うのです。
あれ?(x+3)って同じ形やん、(x+3)2って書いたほうがいいなと考えればいいんじゃないかな。
(a-b)2=a2-2ab+b2
(a+b)2=a2+2ab+b2
キミはいらない!
(a+b)2=a2+2ab+b2と同じじゃないか!
{a+(-b)} 2= a2+2a(-b)+(-b)2
てな感じで、同じに見えてほしい。
bが(-b)になっただけ。
高校でもこういうのは出てくる。
そのたびにいちいちマイナスバージョンを覚えていくのはしんどいので、同じもんなんだというふうに考えるようにしておくといいと思うのです。
慣れも必要
はじめこそじっくり考えて計算すればいいし、途中の式も書けばいいと思います。
いつまでも途中の式を書いて、同類項が出たからさらに計算しなくっちゃとやっていると成長しないので、展開しましょうといわれてひとつひとつ分配法則を使って間違わずに計算できるようになったら、じゃんじゃん暗算に挑戦してください。
そのためにも少し多めの計算練習は必要かと。
ここでしっかり練習を積んでおけば、次に待ってる因数分解もスムーズに習得できると思います。
上の画像は、高校生におすすめしている「数学の計算革命」というやつです。
そのうち、乗法公式もへったくれもなくなってしまうので、簡単なうちに同類項を頭の中でまとめられるようになってくれるとこの先かなりお得です。
おすすめのプリント教材も紹介しておきます。

生徒に優しい、自然と展開ができるようなプリントになっていると思われます。
まとめ
ということで、おすすめの式の展開の方法は
2.同類項が出てくるか予想する
3.慣れたら一撃で答えを出す
4.どうしようもなく困ったときは分配法則に戻る
定期テストで90点前後を軽くとってくるような塾生は、特につまづくことなく一発で答えを出せているのですが、平均点は超えるけど80点まではいかないという塾生は少し苦戦していたのでこんな感じでアドバイスしてみました。
すごく真面目に、どうにか公式に当てはめて解こうとしている様子が見られたのもあって、「まず暗記」っていうのはよろしくないなあと思うのでありました。
ということで、結論としては「公式はできるだけ暗記しない!」としておきましょう。
スラスラ解けている塾生も、丁寧すぎるくらいに途中の式を書いていたので、「答えだけでよくない?」と伝えるのですが、書かないといけないそうです。
それもまたつらいなあと思うのでありました。